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ウェブ広告エキスパートの開発背景

2022.12.12 2022.12.12

ウェブ広告エキスパートの開発背景

ごあいさつ

ウェブ広告協会 代表理事 里村仁士 
はじめまして、私は一般社団法人ウェブ広告協会の代表理事を務める里村と申します。趣味はサウナ巡りで、猫が好きです(2匹飼ってます)。前置きはさておき、私たちは2022年にウェブ広告協会を設立して、同年12月から公での活動を開始しました。ウェブ広告協会のビジョンは「広告をサービスと人をつなぐ懸け橋にする」です。まずはそのようなビジョンを掲げた背景を説明します。

ウェブ広告業界の課題

多くの方が感じる広告の印象は「うざい」「邪魔」「必要ない」などと言った、ネガティブな感情を抱いていると思われます。正直、私もそのように感じるときもあります。ただし、その広告がその人にとって必要な時に、必要なメッセージを伝えられたら、それは有益な情報であり、貴重なコンテンツです。そのような状態を目指すには広告会社側の努力も必要ですが、広告を利用する側が正しい知識を持ち、適切な利用をする必要があります。基本知識が不十分なことで、規約違反をするような広告を配信してしまいユーザーや社会に迷惑をかけたり、経験不足が原因で不毛な広告分析やレポート作成に時間を割いてしまって残業が続いたり、広告効果を適切に判断できないことで事業成長にブレーキをかけてしまったりなど、多くの改善すべき課題が広告には存在していると思います。

私は2011年より、広告運用のコンサル・運用代行・インハウス支援・企業研修・セミナー開催など、あらゆる形で広告の仕事に関わってきました。前述のような課題がなくなり、広告に関わる人達や社会が少しでも良くなるためには、正しいウェブ広告の知識やスキルを身につける必要があります。それらを実現するためにウェブ広告の教育カリキュラムを開発しました。それが認定資格「ウェブ広告エキスパート」です。

ウェブ広告エキスパートの開発を決断した5つの理由

前述のような広告の課題を解決する最適な方法が、教育カリキュラムを提供して、認定資格を発行することなのかについては当初は懐疑的でした。そもそも、Google 広告を始めとした代表的な広告メディアには、充実した学習カリキュラムが存在しています。認定資格についても同様です。Google・Yahoo!・Meta・LINEなどの広告メディアでも各社の認定資格を発行しています。そもそも医師や弁護士などと違って、広告は誰にでも運用が出来ますので資格は必要ありません。それでは、なぜ開発に至ったのか。主に次の5つの理由が挙げられます。

①ウェブ広告を体系的に学べる学習カリキュラムが少ない


広告メディアには充実した学習カリキュラムが存在していると書きましたが、それはあくまでもその広告メディアのプロダクトについてです。Google社であればGoogle 広告が対象です。Google社の学習カリキュラム内でTwitter広告やLINE広告について詳しく紹介されていません。また、ウェブ広告全般のテーマやウェブ広告に関連したマーケティングツールについても情報は分散的で、抽象的な表現が多く見受けられます。

ユーザーの行動は時代と共に変化し、使用するデバイス、触れ合うメディア、態度変容を起こすポイントも多種多様です。そのような変化に連動して、ウェブ広告の向きあい方も変化しています。検索広告の一択では通用しない時代をもう迎えています。多くのウェブ広告から最適なメディアを選択して、適切なターゲティング設定を行い、ニーズにマッチしたクリエイティブを用意をする。ウェブ広告の運用管理では戦略設計力が求められています。つまり、ウェブ広告を体系的に一気通貫で学べて、実践的な知識や技術が身につけられるような学習カリキュラムが今の世の中には必要だと感じました。

②ウェブ広告は更新頻度が多くて継続的なアップデートが特に必要


技術の進化にも目を離せません。機械学習の向上により多くの運用が自動化されました。数年前のやり方が今はもう通用しないといったことも珍しくはありません。新しい広告メディアの登場、過去のやり方を覆す大幅なアップデート、細かい設定機能のアップデート、公にされないサイレントアップデートなどを含めると、広告は日進月歩です。このような性質からも継続的な学習機会を創出する必要があると考えました。

それは単発の講座受講や試験受験だけでは補いきれません。継続的なアップデートへの対応や求められる技術を身につけてもらうためにも、認定資格制度を設けて会員になっていただくことにより、継続的な学習機会を責任を持って創出しやすくなるのではと考えました。

③ウェブ広告について相談できる環境が限られている


広告について質問や相談をしたいときに、皆さんであればどうしますか?どんな質問でも確実に回答してくれる人がいたり、いつでも相談に乗ってくれて適切な方向に導いてくれたりする人がいるような環境は大変恵まれていると思います。そのような恵まれた環境にいない方はどうすればいいでしょうか。例えば、広告メディアのサポートセンターにお問合せをするという方法もあります。中には電話サポートもあるので、親身に相談に乗ってくれるでしょう。ただし、必ずしも適切な回答が得られるとは限りません。機能的な仕様についての質問でも誤回答は珍しくありません。また、答えが1つではない戦略的な相談では、どうしても概念的な推奨方針にとどまることが多いです。近年ではコロナ渦の影響のため、サポートセンターに繋がりにくいことも多々あります。

他にはGoogle社が運営するヘルプコミュニティもあります。そこでは、献身的な有識者の方達がユーザーの質問に回答しています。私もこのヘルプコミュニティで回答をする機会が多かったですが、テキストコミュニケーションが中心になるため、意図の理解が難しいと感じる経験が多かったです。また、基本的にはGoogleのプロダクトが対象のため、あらゆる広告メディアの質問はしにくい環境でもあります。

広告従事者からよく聞かれるのが「今のやり方が正しいのか?」です。絶対的な正解がないとしても、多くの方と意見を交換したり、事例共有したりすることで、現状把握がしやすくなり、やるべきことも明確になるでしょう。逆に広告運用に自信がある方でも、外部の有識者の方達と触れ合うことで、自分が井の中の蛙だということに気づきます。このように、どんな広告テーマについても、いつでも気兼ねなく質問や相談ができる環境は重要です。そのため、交流機会を促進して、それらを実現できるようなコミュニティを形成する必要があると考えました。

④時代の変化により求められる現場での広告運用スキルも変化している


広告成果を上げるには、正しい広告の知識を持ち、プロモーションするビジネスの理解が必要です。これは普遍的な考え方ともいえそうです。現在の広告メディアのプロダクトは自動化を基準とした設計が多くなりました。そのため、属人的な運用管理による広告の成果差が生まれにくい状況になりました。1キーワードごとに細かい入札調整をしなくても、適切な設計がされていれば自動入札が効果的です。

それでは「広告の従事者に求められるスキルは何なのか?」。それは「戦略設計力」だと考えています。ビジネスゴールを達成するために、誰に対して、いつのタイミングで、何のメッセージを伝えて、どのようになってほしいか。このようなユーザーとのコミュニケーションを実現するには、何ができるかという広告機能の理解だけでなく、何をしたいかという、ユーザーとのコミュニケーションデザインを描くことが求められます。そして、サービス、ユーザー、競合などを理解していないと適切なターゲティングや効果的なメッセージは作れません。そして、それらの戦略を広告を通じて具現化するには広告の知識や技術が必要です。広告評価をするには、オンライン・オフライン問わず、他チャネルやビジネスデータを知る必要もあります。このように時代にマッチした「戦略設計力」を普及させるためにも、戦略設計力を鍛える学習カリキュラムを用意する意味があると考えました。

⑤ウェブ広告の運用と教育スキームの構築に自信があった


実現したい広告の学習カリキュラムを提供するためには2つの実績が必要だと思いました。1つめは「広告運用の実績」、2つめは「教育の実績」です。その2つの実績は私のストロングポイントでした。まず、広告運用の実績から振り返ると、私は2011年よりウェブ広告の仕事を始めました。約11年以上にわたり広告運用の研究をして今に至ります。その間、Google社を始めとした主要広告メディアとの連携を行い、最新情報を取り入れながら、多くの有識者との交流も深め、貴重な経験をさせていただきました。

次に教育の実績を振り返ると、私は広告運用のプレイヤーだけでなく、部署責任者として、広告部署を長年統括してきました。その間、教育スキームの構築にも力を入れてきました。また、社外のウェブマーケターの方にインハウス支援サービスを提供したり、講師として企業研修・勉強会・大学講義を行ったりなど、教育系のサービスも開発しました。現在も定期的に講師業やセミナー登壇をしています。少し余談ですが、私は幼いころ教師になることが夢でした。教えて喜んでもらえるのが好きだったからです。そのような気質も教育系の仕事をするうえで合っているかもしれません。その他、舞台役者として何度も舞台出演の経験が実はあります。相手に何を伝えたら喜んでもらえるかというパフォーマンス精神は、教育にも通じるかもしれません。このように「広告運用の実績」と「教育の実績」には自信があり、教育カリキュラムを開発する後押しになりました。

ウェブ広告エキスパートの開発苦労話

 
開発には膨大な時間とリソースが必要でした。同じことをもう1度やれと言われたら絶対にできません。特に苦労したことをカリキュラムの開発範囲から選ぶとしたら公式テキストの制作です。テーマ範囲も広く、ウェブ広告全般のテーマや、Google・Yahoo!を中心とした検索広告とディスプレイ広告、SNS広告ではMeta・Twitter・LINEを中心に取り上げました。その他、動画広告やその他広告(DSP、Amazon、アプリ、ショッピングなど)を含め、広告以外にもGoogle アナリティクス・タグマネージャー・ルッカ―スタジオ(旧:データポータル)・オプティマイズなどの広告と関連性が高いGoogle マーケティングプラットフォームについても扱いました。

情報の詰め込みにならないように、実務で展開する上での視点を盛り込んだり、分かりやすいように図解を多く使用したり、難しい言葉を極力使わないように配慮したりなど、初心者の方でも読みやすい内容になるように心がけました。結果的には500ページに近いボリュームになりました。その他にも、講座スライド、試験問題、課題レポートなどの作成や設計を行いました。当然私だけではすべてのカリキュラムを作成できません。ウェブ広告エキスパートのプロジェクトは多くの方々のご協力のもとに成り立っています。その中でも特にお世話になった方々を紹介します。

まずは、株式会社フェルクの代表取締役・木村誠宏さん。とても真摯に広告事業に取り組んでいる方です。木村さんの情熱は私の支えになりました。そして、実績豊富な社内メンバーの方々にも多くのページを執筆していただきました。次に、株式会社アイクラウドの代表取締役副社長・富田一年さん。アイクラウド様は企業研修や人材育成のリーディングカンパニーで、教育サービスの実績が大変豊富にある会社です。その中で現役講師としてもご活躍されている富田さんには、執筆や教育コンテンツの作成だけでなく、多くのアドバイスをいただきました。そして、アスタノット株式会社 代表取締役社長・小笠原弘充さん。アスタノット様は広告の運用代行を始めとした、ウェブ・マーケティングで企業の成長をお手伝いする会社です。小笠原さんはGoogleヘルプフォーラムでもご活躍された実績があり、とても信頼ができる方です。このような意欲的で情熱的な方々と今後もご一緒できることを嬉しく思います。

最後に、私が在籍するブルースクレイ・ジャパン株式会社の方々。私が「日本一分かりやすく、参考になるテキストを作成したい」と宣言してから、依頼された方達は日常業務が多忙のなか、時間を捻出してテキスト作成や図解を用意してもらいました。感謝の気持ちで一杯です。その他にも、多くの方々にご協力いただきました。カリキュラムは完成したら終わりではなく、皆様の声に耳を傾けて、更にブラッシュアップを継続していきます。

さいごに


ウェブ広告協会は「広告をサービスと人をつなぐ懸け橋にする」ために、学習機会の創出、研究開発、意見交換などの交流促進を実施していきます。ウェブ広告エキスパート講座を講師として開催したい方には開催できる仕組みも用意しています。講座開催はできないけど、多くの方と関わりたいという方には気軽に参加できるコミュニティがありますし、各種イベントも企画しています。ウェブ広告に関わる方々が、少しでも幸せになれるように努めますので、今後ともよろしくお願いいたします。

里村 仁士

里村 仁士

ウェブ広告協会の代表理事。2022年12月にウェブ広告エキスパートを開発。運用型広告の運用管理やコンサルが得意分野。企業研修やインハウス支援などの教育支援サービスも実施。2013年国内で5人目のGoogle 広告 トップコントリビューターとしてGoogle社より認定実績あり。